日本ブライト旅行社長のブログ
 
栃木県佐野市の旅行会社社長のひとり言です。
 


心身を良好に調整してくれる

古典『呂氏春秋』にも登場する紹興の町。
越王の栖むや会稽(=紹興)なり、酒有り江に投ず、民その流れを飲みて戦気百倍す」という一文は、二千数百年も前には、既に、この町が酒造りで有名だったことを語っている。

心身を良好に調整してくれるいにしえ人の智慧の結晶、紹興酒をたずねて紹興へと赴いた。



酒がなければ礼をなさず」と言われるとおり、中国における酒の地位は、料理よりもずっと高いものだった。

いにしえ人たちは、酒の中に玄妙な学問があると信じ、心身の健康に有益な酒の喫し方をこぞって模索していたのだ。

そのとおり、酒は、身体を伸びやかにするだけでなく、ある種の良好な感覚(センス)を生じさせる効能がある。この心身共に良好な感覚の体験=“酒中趣”は、文人や芸術家たちに、インスピレーションを与え続けてきた。酒豪で知られる李白も、白居易も、酒なしには優れた詩を残せなかったはずだ。

どこか懐かしい紹興の村の風景。豊かな水が、うまい酒を育む。

そう、素晴らしい文化と、旨い酒は、いつの時代でも、そんな場所でも、仲睦まじいパートナーになっていることを忘れてはいけない。

中国でもっとも古い酒のひとつに数えられる紹興酒を生んだ紹興は、文豪・魯迅の故郷であり、越劇の発祥の地でもある。

また、女性革命家の秋瑾(きん)や、中華人民共和国の首相だった周恩来の出身地でもある。

紹興酒とは?

さて、数々の偉人たちを生んだこの紹興酒というものは、どんなお酒なのだろうか。知っているようで、意外と知られていないのが現状だ。

私自身も、「黄酒=紹興酒」と思っていたり、「老酒=紹興酒」だと勝手に思い込んでいたのだが、浙江省紹興市の鑒湖の水(湧き水)を使い、製造後3年以上の貯蔵熟成期間を経て製品化した物しか「紹興酒」と呼べないのだという。

“made in Taiwan”と書いてある紹興酒を中華街で見たことがあるが、あれは、「紹興酒」ではない。“原産地統制名称(AOC)”と同じで、この定義があてはまらない物は、本来「紹興酒」とは名乗れないのである。

紹興の町は、豊かな水に恵まれ、「東洋のベニス」とも呼ばれる水郷です。



町のあちらこちらに小さな醸造所が点在し、鑒湖付近では辺り一面に紹興酒の芳香が漂っている。
現在の紹興市には、200あまりの紹興酒の工場があると言われているが、その中でも、昔ながらの製法を守っているという小さな蔵元を訪ねてみた。

上海から車で約2時間、ガン湖のほとりにその蔵はあり、敷地内には、100年以上にもわたって使い込まれているという大きな壷が並べられており、甘酒に似た馥郁たる香りが、あたり一面にただよっている。麹の匂いだ。もし「酔郷」というものが存在するのなら、こんな香りのするところに違いないだろう。決して果実酒の醸造の香りにはない、東アジア人のDNAを揺さぶる夢心地の香り。 「良い匂いでしょう? うちの工場は、すべて天然醸造なんですよ。ここでは、現代的な機械はほとんど使わずに、昔ながらの手法を固持しているんです。季節を無視して一年中醸造をしている工場もたくさんあります。けれども、私たちは、味にこだわりを求め、晩秋から初春の季節に醸造をするのです」と、工場長は誇らし気に語る。

麹の菌は生き物。自然の状況で変化して、微妙な味わいを楽しめる喜びが紹興酒の醍醐味なのだろう。このような伝統的な製法でつくられた紹興酒は二日酔いにならないという。

「ほら、こうしてできた紹興酒には、157種類ものアミノ酸が検出されており、血液をさらさらにしてくれるんだ。日本酒と異なる色と風味は、麹の違いさ。挽き割りの小麦から1か月かけて造る麦麹のほか、蓼(たで)の粉末を混ぜた酒薬と呼ばれる麹を入れる。蓼には、液循環を良くし、利尿作用もある。しかも、鉄分も豊富だから、女性にはいいことずくめだよ」。

やはり、4000年も造り続けられているだけあるお酒には、それなりの科学的根拠があるのだ。



次に、「秘蔵のヴィンテージ紹興酒を一目見てみたい」という好奇心にかられ、私たちは、紹興酒コレクター・徐さんの案内する蔵に足を運んだ。蔵には、年老いた酒の番人が静かに椅子に座っており、徐さんの顔をみるやいなや、何も言わずにポケットから鍵の束を取り出して蔵の引き戸を開けてくれた。

精霊が棲んでいそうな真っ暗で冷たい蔵の中に並ぶおびただしい数の瓶。石膏で蓋をして製造年が記されている。この中で、何十年の月日を経て琥珀色の液体がまろやかに変化しているのだ。徐さんは惜し気もなく、非常に縁起の良い88年の瓶をソトコトのために開けてくれた。その味を、一言で表すならば、「天の美禄」。芳醇な命の水は、人間が発見したものではなく、偶然の産物、つまり、天が人類に賜わった贈り物。それは、憂いを晴らすこともできれば、逢瀬を楽しむこともでき、芸術家たちに霊感を与え、上手に飲めば、人々を健康にし、女性を美しくする。やはり、酒の中には、人類が始まって以来いまだに解明しつくしえぬ哲学が潜んでいるのだ。

中国人たちは、この、酒の中にある精妙な智慧を、唐代以降、「酒令」という形で文化的内容に富む飲食遊技として発達させた。酒令は、酒を飲む絶妙なリズムを調節し、その場の雰囲気を盛り上げるたしなみのようなものだったらしい。近代に入って酒の生産量が増えていくにつれ、「酒令」は跡形もなくなる勢いで絶滅してしまったのだが、現代人の思考にあった「新・酒令」をつくるべきだと主張している人もいるらしい。有意義で文化的な現代的な飲酒スタイルが新生・中国から生まれてくることに期待したい。



6月24日(日)23:47 | トラックバック(0) | コメント(0) | 社長日記 | 管理

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